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岡田 晴耕 2023.11.24
住まいの断熱性について設計士さんに聞きました![前編]
みなさまこんにちは。LIXILリフォームショップ内海建設の店長・岡田です。
皆さんは、2年後の2025年以降、住まいの省エネ性能が一定の基準に達していなければ、新築住宅が建てられなくなることをご存知でしょうか?
政府では、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするという「2050カーボンニュートラル」を目標に掲げています。それを達成するには、住宅の省エネルギー化は必須の課題です。
現状は、延べ床面積300㎡以上の中規模・大規模建築物だけが省エネ基準での適合義務対象ですが、2025年度以降からは、小規模建築物や住宅も対象となります。
その先駆け的な取り組みとして、2022年度には23年ぶりに断熱等性能等級に5・6・7が新設され、その他の省エネ化に向けた施策が次々と開始されました。
断熱性能基準も上がり、これからは「断熱等性能等級6」がこれからのスタンダードとなります。
・・・といっても、性能等級の数値を示されたところで、お客様には何のことなのかよくわからないというのが当然かと思います。
そこで、元当社のスタッフで、現在も当社を施工管理の仕事を通じて支え続けてくださっている森下設計工房の一級建築士・森下庄治さんに、これからの住まいの断熱について伺いました。
その内容を前編・後編に分けてご紹介します!
Q:断熱性能の基準が上がることは、これから家を建てる人たちにどんな影響をもたらすのでしょうか?
A:2025年以降、住まいの断熱性能が政府の求める基準に達していないと、新築の確認申請を許可されず、家を建てられなくなってしまいます。また、グリーン化事業などの補助金を得るには、これまで以上にハイスペックな断熱等級を満たさなければなりません。何年か前までは長期優良住宅として性能の高さを評価されていた住宅が、これからは当たり前となってしまうのです。ということは、お客様が望む・望まないに関わらず住まいの断熱性能を上げる必要があり、その分費用も余計にかかることになります。もちろん、新築だけでなくリフォームも、それに準じて同様の断熱性能が求められるようになります。
Q:性能重視の家づくりに対する森下さんのお考えは?
A:断熱等級が5だ6だというお話をしても、お客様にはよくわからないと思うんですよ。ですから、僕はよく次のようにお客様にご説明します。
「冬の夜、寝る前に室内を暖房していると、室温が大体20℃程度になりますよね。寝るときにその暖房を切って、次の朝起きたときに室温が何度になっているか。その条件で、この地域における昔の家とこれからの家を比べてみましょう。まず、昔の家の場合は、朝起きると室温が10℃くらいまで下がってしまいます。でも、これから新しい基準に基づいて家を建てると、朝起きても室温が15℃程度を保てるようになります」
・・・そういうお話をすると、お客様も内容をよく理解し、納得してくださいます。
Q:朝起きたとき15℃というのは、大体肌感覚でどの程度の寒さなのでしょうか?
A:例えば、パジャマの上にガウンを羽織るくらいで、暖房をつけなくても過ごせる程度の温度です。こうして具体的に肌感覚で温熱環境をご理解いただけると、「そういう暮らしがしたい」という話になり、そこから初めて具体的に「それなら断熱性能はいくつくらい必要ですね」という話になってきます。ただし、同じ断熱仕様でも、建物の立地条件やプランによって断熱効果は変わってくるので、そういうご説明もした上で、一棟一棟のお宅の条件に合った断熱性能を検討し、ご提案しています。
Q:断熱材はどのような種類のものを使えば効果的なのでしょうか?
A:断熱材は、別に「この種類でなければならない」ということは全くありません。断熱等級のもととなるのは、計算で算出する数値なので、断熱の目標値に達するように、床、壁、天井の断熱材や窓の仕様を組み合わせればいいだけなのです。例えば、リフォームで窓の性能が悪ければ、床や壁、天井など他の部分の断熱性能を上げれば、全体の数値が上がります。
ですから、「床はこの断熱材でなければダメだ」ということはありません。ただし、状況によっては床の断熱材の仕様が限定される場合もあるので、そういう時には他で断熱性能を補うようにしてあげればいいのです。
つまり、断熱性能表示というのは計算上だけのことなので、実際には、朝起きた時の暖かさをどこまで望むかを基準に、ご自宅の断熱性能を検討することをお勧めしています。
これからの基準としては、長期優良住宅の条件である等級5以上、地域的には等級6以上がお勧めです。ただし、断熱性能を良くするということは、それだけ費用も上がるということなので、全体的な予算のことも考えて検討することをおすすめします。
Q:現状でも、省エネ性や断熱性、耐久性などに優れた家は補助金の対象になりますよね。その仕組みについて教えてくださいますか?
A:省エネ性や断熱性、耐久性などに優れた家を対象とした補助金の中に「地域型住宅グリーン化事業」があります。地域型住宅グリーン化事業の制度は、省エネルギー性能や耐久性などに優れた木造住宅の整備や、三世代同居への対応を目的としています。そして木材の生産加工や住宅の建設に関わる事業者に対し、木造住宅を建てる際に優遇措置を取るのも目的の一つです。
Q:では、地域型住宅グリーン化事業の補助金は、地元の家づくりに関わる団体を通じて得られるということですか?
A:そうです。地域型住宅グリーン化事業で補助を受けるには、地域で住宅に関わる事業者の誰が音頭をとっても良いのですが、とにかく地域ごとにまとまったグループを作って、国が求めるように地域材を用いたり、断熱性能を高めたりすると、100万円程度まで補助金を得られます。
グループを主催するのは、建材屋さんなど、素材を調達したり工事をしたりする事業者さんがやる場合が多いですが、事業者が受け取った補助金額は工事費用から差し引かれるため、結果的には、住宅を購入する方が恩恵を得ることができます。
その補助金を利用して、お客様にリーズナブルに家を建てていただきたいと考え、私は今から6年ほど前に、有志の仲間を募って「遠州建築士による住まいの会」を発足しました。この団体は、建築士20名余りが所属している点が、他の地域の団体とは異なります。そして、それぞれの会員のお客様が地域型住宅グリーン化事業の補助金を利用して家を建てることを希望する場合には、当団体として申請を行い、補助金の認可を得ます。内海建設さんのお施主様もこれまでに多くの方がこの補助金を利用してマイホームを賢く・お得に建てることができました。・・・
(後編へ続く)