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岡田 2024.12.06
一棟まるごと断熱リフォームシリーズ(VOL.1)
「住まいの断熱性が高いほど家族が健康でいられる!?」
こんにちは、菊川市のLIXILリフォームショップ内海建設です。
師走を迎え、朝晩の冷え込みが段々と厳しくなってきました。暖かいお布団から出るのが辛く感じる季節の到来です。
実は、住まいの寒さは、私たちの健康に大きな影響を及ぼしています。特に高齢者や子どもにとって、冬の寒い住環境は深刻な健康リスクとなり得ます。そのため、快適で健康的な暮らしを実現するためには、住まいを暖かく保つことが極めて重要なのです。
その解決策として、最も効果的なのが住宅の断熱リフォームです。中でも効果的なのは、住まい全体の断熱性能を向上させる「一棟まるごと断熱リフォーム」です。
そこで、「一棟まるごと断熱リフォームシリーズ」として、これから住宅の断熱性能について、様々な角度から詳しくご説明していきます。
第1回目となる今回は、「断熱性能が健康に与える影響」をテーマに、医学的な見地から住まいの温熱環境と健康との関係性について解説していきます。
【暮らしの温度と健康との関係】
エアコンが効いた暖かい室内でも、足元が冷えたり、廊下やトイレが寒かったりと、冬の住まいのあちこちに寒さが潜んでいるもの。このような温度差は快適性を損ねるだけでなく、健康にも悪影響を及ぼします。
私たちの健康は、生活環境の温度と密接な関係があります。
人間の体は恒温性を保つため、寒い環境では体温維持のためにエネルギーを消費し、血管を収縮させて血圧が上昇します。
そうすると、心臓や血管系に余計な負担をかけることになります。
医学研究によると、寒冷環境での生活は、高血圧、心臓病、脳卒中などの循環器系疾患のリスクを高めることが判明しています。特に高齢者や持病のある方にとって、適切な室温管理は健康維持の重要な要素となります。
寒い環境下では、体は常に体温を維持するために余分なエネルギーを消費し続けます。
これは免疫機能の低下にもつながり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる原因となります。また、寒さによる筋肉の緊張は、肩こりや腰痛といった体の不調も引き起こします。
このように、暮らしの温度と健康との関係性は、さまざまな調査や研究で明らかになっており、「住まいの断熱性を高めたら、家族の健康が改善した!」という調査データもあります。
【予防医学につながる住宅環境づくりの必要性】
近年、予防医学の観点から、住環境の質が注目されています。
病気になりにくい健康な体づくりとそれを持続することを「予防医学」といいます。
従来の治療中心の医療から、病気を未然に防ぐ予防医学へと視点が移行する中、健康的な住環境づくりは重要な課題となっています。
適切な室温管理が可能な住環境は、医療費の削減にもつながり、社会全体の健康増進に貢献すると期待されています。
特に注目すべきは、断熱性能の向上が、生活習慣病の予防に大きく貢献するという点です。寒冷ストレスの軽減により、血圧の安定化や代謝機能の正常化が期待できます。また、快適な室内環境は、運動習慣の定着や良質な睡眠の確保にもつながります。
近年の研究では、住宅の断熱性能と医療費との関連性も指摘されています。断熱性能が低い住宅に住む人々は、そうでない人々と比べて医療機関の受診率が高く、特に冬季の医療費が増加する傾向にあることが分かっています。
【健康を守るための世界的指針は冬の室温18℃以上】
WHO(世界保健機関)は、健康的な室内環境として、冬季の室温を18度以上に保つことを推奨しています。この基準は、人体への負担を最小限に抑えながら、快適な生活を送るための最低限の温度として設定されています。
温度変化の大きい住環境は、特に高齢者にとって深刻な健康リスクとなります。18度を下回る室温では、血圧上昇や血液粘度の上昇が起こり、循環器系疾患のリスクが高まります。また、低温環境は関節の硬直や筋肉の収縮を引き起こし、転倒のリスクも増加させます。
しかし、日本の多くの住宅では、この基準を満たすことが困難な状況にあります。特に古い住宅では、断熱性能が不十分なため、暖房を使用しても室温が安定せず、健康リスクが高まる可能性があります。
実際、日本の住宅の室内環境は、諸外国と比較して厳しい状況にあります。欧米諸国では、建築基準において断熱性能が重視され、新築住宅はもちろん、既存住宅の改修においても高い基準が設けられています。一方、日本では断熱基準が比較的緩く、特に古い住宅では十分な断熱性能が確保されていないケースが多くみられます。
【ヒートショックが起こりやすい熱めの入浴は、家の寒さも原因】
ヒートショックは、温度差による血圧の急激な変動が引き起こす危険な状態です。特に、寒い脱衣所から熱い浴室への移動時に起こりやすく、重大な事故につながる可能性があります。
断熱性能が低い住宅では、居室と浴室の温度差が大きくなりがちです。このため、入浴時のヒートショックのリスクが高まります。適切な断熱改修により、家全体の温度差を小さくすることで、このリスクを大幅に軽減することができます。
ヒートショックが原因のひとつである入浴中の死亡者数は、交通事故死亡者の約5倍とも言われ、高齢者が多数を占めています。特に脱衣所の室温が低いと熱めの湯に浸かる方が多く、血圧の乱高下が発生しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクが高まります。
ヒートショックを予防するためには、脱衣所や浴室を暖めることが重要です。しかし、部分的な暖房では根本的な解決にはなりません。住宅全体の断熱性能を向上させることで、各室間の温度差を最小限に抑え、より安全な入浴環境を整えることができるのです。
【家の断熱性を高めることで血圧が下がる要因に】
昨今、日本人の3人に1人は高血圧といわれています。
血圧が高い状態をそのままにしておくと病気の原因となるため予防が必要です。
その予防策としては、食生活の改善や運動が知られていますが、断熱リフォームにより家が暖かくなることで、起床時の血圧が低下するという分析結果があり、室温の管理も重要といわれています。
断熱性能の向上は、直接的に血圧低下につながることが研究で明らかになっています。寒冷刺激による血管収縮が減少し、血圧の上昇を抑制する効果があるためです。
特に、早朝の起床時や夜間のトイレ使用時など、血圧が不安定になりやすい時間帯での効果が顕著です。断熱改修後は、血圧の日内変動が穏やかになり、循環器系への負担が軽減されることが確認されています。
具体的な研究データによると、断熱改修を実施した住宅では、居住者の収縮期血圧が低下することが報告されています。これは、軽度の高血圧症の改善に匹敵する効果です。
また、血圧の安定化は、心臓病や脳卒中などの重大な疾患の予防にもつながります。特に高齢者において、この効果は顕著に現れることが分かっています。
【家全体が暖かいと活動が増え、健康リスクの低減に】
寒い季節は暖房の効いた場所から動きたくなくなり、運動不足になりがちです。厚生労働省は糖尿病・循環器疾患等の予防の観点から「今より10分多く体を動かそう」と提唱しています。
一方、適切な室温が保たれる環境では、居住者の活動量が自然と増加します。寒さによる活動の制限がなくなり、家事や運動などの日常的な活動が活発になることで、健康的な生活習慣の維持につながります。
断熱リフォームによって、室温の改善で家の中での活動量が増えることがわかっており、健康リスクの低減につながることが期待できます。
また、家全体が暖かいことで、高齢者の転倒リスクも低下します。寒さによる体のこわばりや関節の痛みが軽減され、スムーズな動きが可能になるためです。
さらに、快適な室温環境は、子どもの学習効率にも良い影響を与えます。寒さによる集中力の低下を防ぎ、より効果的な学習活動を支援することができます。
【結露の発生を抑えることで人も住まいも健康に】
断熱性能の向上は、結露の発生を抑制する効果があります。結露は、カビやダニの発生を促進し、アレルギー症状や呼吸器疾患のリスクを高める要因となります。
また、結露による建材の劣化も防ぐことができ、住宅の長寿命化にも貢献します。健康的な室内環境の維持と、建物の保全の両面で重要な役割を果たします。
結露は見た目の問題だけでなく、深刻な健康被害をもたらす可能性があります。カビの胞子は空気中を浮遊し、呼吸器から体内に入ることで、喘息やアレルギー反応を引き起こす可能性があります。また、ダニの増殖は、アトピー性皮膚炎や鼻炎などのアレルギー症状を悪化させる原因となります。
断熱改修により室内の温度差が小さくなることで、結露の発生リスクは大幅に低減されます。これは、壁や窓周りの表面温度が上昇し、空気中の水分が結露しにくくなるためです。
【家の断熱性を高めた結果、家族の健康が改善】
断熱性能を高め、暖かい家で暮らすことによって、健康改善が認められたという研究結果があります。しかも、断熱グレードが高いほど、健康改善の割合が高くなることがわかっています。
具体的には、以下のような効果が確認されています:
・風邪やインフルエンザの罹患率の低下
・喘息やアレルギー症状の改善
・高血圧の改善や血圧の安定化
・睡眠の質の向上
・冬季うつの症状軽減
・子どもの集中力や学習効率の向上
また、家族全員の生活の質が向上することで、心理的な健康度も改善される傾向にあります。暖かい住環境は、家族が集まりやすい空間を作り出し、コミュニケーションの活性化にもつながります。
断熱改修には初期投資が必要ですが、長期的には医療費の削減や生活の質の向上など、様々な面でメリットをもたらします。住まいの断熱性能は、私たちの健康を守るための重要な要素です。
ご家族がいつまでも健康・快適に過ごすためにも、住まいの断熱性能についてよく知っておきましょう。
次回は、一棟まるごと断熱リフォームで快適性や省エネ性がどのように変化するのかについてご説明します。どうぞお楽しみに!
文:LIXILリフォームショップ内海建設 店長 岡田