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岡田 晴耕 2023.12.01

住まいの断熱性について設計士さんに聞きました![後編]

みなさまこんにちは。LIXILリフォームショップ内海建設の店長・岡田です。
今回は前回に引き続き、元当社のスタッフで、現在も当社を施工管理の仕事を通じて支え続けてくださっている森下設計工房の一級建築士・森下庄治さんに、これからの住まいの断熱について伺いました。

前編をまだお読みでない方は、こちらを先にお読みいただくとわかりやすいかと思います。

では、引き続き後編をお読みください!

Q:お客様に断熱性能についてお伝えする際、気をつけていることは?

A:
前回もお伝えしましたが、断熱性能は、本来であれば「生活の中でどう感じるか」を基準に考えるべきであり、等級5だ、6だと数値を基準にお客様にお伝えしても、その数値がどういう意味を持っているかお客様が理解していなければ意味がないし、その前提として、工務店も設計士もお客様にしっかり説明ができるように、断熱性能のことを深く理解していなければなりません。そのため、内海建設の皆さんと同様に、私も日々知識を更新するよう努めています。

Q:お客様に断熱性能について説明する際、気をつけていることは?

A:前回もご説明しましたが、お客様に断熱性能を理解していただくためには、次のようにお話しすることが多いです。
「冬の夜、寝る前に室内を暖房していると、室温が大体20℃程度になりますよね。寝るときにその暖房を切って、次の朝起きたときに室温が何度になっているか。その条件で、この地域における昔の家とこれからの家を比べてみましょう。まず、昔の家の場合は、朝起きると室温が10℃くらいまで下がってしまいます。でも、これから新しい基準に基づいて家を建てると、朝起きても室温が15℃程度を保てるようになります」
・・・リフォームでも新築でも、この考え方を基準に断熱性能を理解いただくようにしています。
ただし、新築の場合は建物の配置やプランをゼロベースから考えていけるので、断熱性能をあらかじめ考慮したプランをご提案しています。

Q:断熱性能を考慮したプランとはどのようなことですか?

A:
まず、静岡県は日照時間が長いので、日照をベースに断熱性能をどのように確保していくかという考え方で進めていく必要があると思います。なぜなら、断熱性能を上げすぎてしまうと、日射が加わった際にオーバーヒート現象が生じる可能性があり、夏は暑くてたまらなくなってしまうからです。

※オーバーヒート現象とは・・・
夏に家の中に入ってきた太陽熱が、断熱性能によって外に逃げず留まってしまうことで室温が上昇しすぎてしまう現象。それを防ぐには、季節ごとに変化する太陽の高度や位置をしっかり考慮して高気密・高断熱の住まいを設計する必要がある。

Q:特に最近は夏の暑さが厳しいので、日射については配慮が必要ですね。

A:
太陽光や太陽熱、風など、自然の力を住まいに生かした設計手法のことを「パッシブデザイン」と言いますが、パッシブデザインが世に出回り始めた10年、15年前と比べて、最近は夏の暑さが相当厳しくなってきたので、当時の考え方のままで設計してしまうと、日射を家の中に取り入れ過ぎてしまうケースがあります。ですから、その地域の最近の気象条件に留意して、住まいを設計する必要がありますね。

Q:住宅の費用の内訳を考えると、今後は必然的に性能にかかる費用が多くなりそうですね。

A:
家を建てるときには、素材をもっといいものにしたいとか、キッチンをハイグレードなものにしたいとか、お施主さんなりに色々こだわりたい点があるかと思います。一方、断熱性能を高めたところで、見た目が良くなる訳ではありませんが、キッチンなどの住設機器は将来的に交換することはできても、建てた後で断熱性能を上げることは難しいので、新築時にできるだけ断熱性能を上げておいた方がいいと思います。脱炭素対策や省エネ性のことを考えても、できれば断熱性能が高く、無暖房の住まいがこれからの理想ではないかと思いますね。

Q:断熱性能と同様に気密性能を高めなければならないのはなぜですか?

A:
気密性能をなぜ高めるかというと、空気を効率的に交換するためです。実は、高気密の家にも穴(通気口)は開けてあります。低気密の家との違いは、低気密の家は建物のどこに隙間が空いているのかわからないため、効率的に換気ができません。一方、高気密の家は、建物の気密性を高めて空気が入らない状態をつくった上で、対角線上に通気口を開けて計画的かつ効果的に換気ができる点が大きく異なります。
よく、「住宅の気密性が高すぎると息苦しく感じる」と言われますが、それは間違い。断熱性だけ高めて気密性が低いと、空気がしっかり流れていかず、高気密・高断熱の家よりももっと息苦しさを感じます。だからこそ、断熱性を上げることと同時に気密性もしっかり上げないと快適な環境を築くことはできないのです。等級の設定については気密性だけ置き去りになっている状態ですが、家を設計する際には、断熱性と同様に気密性を重視してプランを考えています。

Q:高気密・高断熱な家にするためにおすすめの間取りは?

A:
断熱性能や空気の流れを考えると、ひとまとまりのLDKを設けて、その周りに個室をくっつける間取りをよくご提案します。そして、玄関はそのゾーンよりもできるだけ離して孤立させるように配置することが多いです。昔の家は、玄関が出発点で、そこから廊下を設けて部屋を配置するというスタイルでしたが、断熱性能から考えると、玄関は単に出入り口として捉え、LDKを中心に間取りを考えるのがいいと思います。玄関まで含めて断熱性能を高めるのは難しいので、そのような間取りにして居住スペースだけの断熱性能を高めることを原則として、新築やリフォームのプランを考えるようにしています。

Q:リフォームの場合は、新築よりも気密性を確保するのが難しいですよね?

A:
そうですね。既存住宅の気密性を向上させるのはなかなか難しいのが現状です。1階と2階の両方ともリフォームができるといいのですが、予算もあることですし、「家族構成も変わったので、2階は使わないからいいよ」というお客様が多いので、実際は1階のみをリフォームする場合が多いですからね。その場合は、2階を小屋裏収納的に考え、1階だけで日常生活が完結するように間取りをプランします。そして、階段には建具をつけて1階と仕切り、1階の天井に断熱材をしっかり入れることで、断熱性能を高めることができます。1階だけの断熱等級を計算することもできるので、それに見合ったプランがご提案できます。
リフォームでは、お客様から「家が寒いのでなんとかしてください」というご相談が非常に多いです。ですから、断熱性能を高めることで、今のお住まいでももっと暖かく過ごせることを皆さんに強くお伝えしたいですね。

・・・森下さん、どうもありがとうございました。家の中が寒いと、健康にも悪影響を及ぼします。LIXILリフォームショップ内海建設では、住まいの断熱性能を高め、快適に暮らすための「ここちリノベーション」をご提案しています。どうぞお気軽にご相談ください。

文:LIXILリフォームショップ内海建設 店長 岡田

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